壊れたギターケースのハンドルを修理してみよう
大切な楽器を保護するためのハードケース。レスポール・オーナーにとっては、このハードケース(ブラウン・スリム・ケース)が、意外と厄介な代物だったりします。たとえばラッチ(Latch)のベロが出ている為、不用意に蓋がしまって、大切なサンバーストのトップにへこみ傷を付けてしまう事故。あるいは、ハンドルが知らず知らずの内に劣化していて、階段を運搬中などに壊れてケースごと落下…。 今回は、ハードケース事故の中でも、比較的皆さんが長いコレクター歴の中で、一度は「えらいこっちゃ」という目にあっているはずの、「ハンドル損壊」について、リペアー入門編です。
レスポール用ハードケースの中でも、もっとも悪名高きブラウンケースが、Heritage 80や59 Vintageに付属していた、Gibsonロゴ入りのスリムケースです。同時期のKorina V専用ケースも同様ですが、このハンドルが劣化しやすく、遅かれ早かれ根元から割れて取れてしまいます。画像は、悲しくもプラスチック素材部分のみ脱落してしまった、ケースのブラケット部分です。
おおむねこの段階で、「ヒモ」「チェーン」「皮ストラップ」などを巻いて、個人的に工夫して使いこなすしか無かったのです。ちょっと気がきいたオーナーであれば、本革製の後付けハンドルを付けたりもしますが、これが案外高額で、作りは丁寧ですが、10kg近い重量の振動を常時受けるには、長持ちしません。
今回のリペアーは、ハンドル部分とアクセルと呼ばれるピンを2本使った比較的シンプルな作業をご紹介します。ピンは、頭と逆のサイドが穴状になっていて、ここをつぶしてブラケットに固定する仕様です。
古い金具を外す
まず、ブラケットに残っている古いアクセルをペンチで切って外します。
そこに新しいハンドルとアクセルを装着します。
ピンを通して先端を潰して固定
手元にハトメプライヤーがあれば良いのですが、おおむねご家庭にはありませんから、なるべく手元にありそうな道具を使ってみましょう。今回は、細めの六角レンチで、穴を外側に広げました。
次は、その部分をつぶすようにしてストッパーにします。
専用工具ではないので、見た目は少々荒っぽいですが、どちらもハンドルの内側に隠れる部分なので、あまり気になりません。
完成
さて、仕上がりはいかがでしょう。新品の様に綺麗にまとまりました。
レザーハンドルのリペアに挑戦
さて次はヴィンテージ・ブラウン・スリム・ケースを、USA製ハンドメイドのレザーハンドルを使ってリペアしてみましょう。といっても、樹脂製ハンドルと作業は一緒です(笑)
まず現状の写真です。ハンドルのハンガー部分の金属が露出しています。
概ねヴィンテージ・ケースのレザーハンドルは使っている内にこのような状態に悪化してきます。気休め程度に付けていたレザーカバーを外してみます。レザーの内側がパルプ素材なのが解ります。金属のハンガーは相当長いので、これがすっぽり抜けたりすることは余りないようですが、それでも見た目から気持のよいものではありません。
古い金具を取り外す
アクセルをニッパーで切って、ブラケットから外します。
今回取り付けるのは、USA製レザーハンドルで、ヴィンテージをレプリカしたものです。これは、カリフォルニアの個人製作家が手作りで作っています。気まぐれなのでロット毎に色や糸、仕上げが異なりますが、フィーリングはピカイチですね。
準備するものは、六角レンチとプライヤーだけで、前回と同じく家庭にある工具です。本体に当ててみると、綺麗にフィットしてカッコいいですね。
新しいピンに交換
ではブラケットにレザーハンドルとアクセルを通して、内側のエンド部分を六角レンチで外側につぶします。
反対側も同じようにエンド側をつぶして、プライヤーで平たく広げます。
先端を潰す専用の工具を使えば綺麗に仕上がりますが、手軽さからすれば、これで十分な感じがします。ここまでの作業で10分かかりませんでした。
完成!
仕上がりの感じを見てみましょう。本体に比較してハンドルが綺麗なのを除けば、驚くほどしっくりとなじんでいます。冒頭の「ゴワゴワでメタル露出ハンドル」とは比較にならない復活ですね。全体で見ても違和感なく、少し使い込んで汚れてくれば完璧です!
一方で、ブラケット部分が損傷している場合は、今回のようなアクセル取り換えではなく、ハンドルにあらかじめアクセルとブラケットが付属しているタイプに、足が二股になっているリベットを使って、ハードケース本体に取り付ける大工事になります。